女性 例)大阪府内在住 16歳 ひきこもり歴 1年半

ご家族の方から見たひきこもりの原因:
○ 中学校でのいじめ(集団にて)
○ 家族との交流はあるが、ご家族の方外の人間への人間不信(対人恐怖)になっている
○ 内向的である
○ 学校での信頼できる友達がいなくなってしまった

ご家族の方から見た当事者の方の様子や特徴、希望:
○ 部屋から出る時→随時。昼間でも母親が仕事の休みの時は、一緒にリビングで過ごすこともある。また父親とも、週に2~3度晩御飯を食べる。週末に兄弟を含めたご家族の方全員で遠出をすることもある。(当事者の方は車での移動を希望する。友人に会いそうでないと当事者の方が感じた所であれば)兄弟との関係も良好。普通よりもいいのではないか、と見ている。
○ 外出は基本的にしない。欲しい物は母親に伝える。
○ 毎日部屋でパソコン(インターネット)をしているようだ。
○ ご家族の方としてはいずれ外出ができるようになり、学校や仕事も含め社会にかかわれるようになればと考えている。

●まず過去の事をしっかり聞いて対人恐怖についてカウンセリングを行い、安定してから将来について考えていければ
①当事者の方が女性のため女性カウンセラーを派遣→ご家族の方へのヒアリング
○ 成育状況
○ 親御さんの意見として、当事者の方に対してどう考えているのか等を綿密にお聞きします。
○ 当事者の方とカウンセラーがコンタクト・コミュニケーションをとれるかどうか確認します。

②当事者の方にあったプログラムの作成
当事者の方とご家族の方それぞれに支援の目的、おおまかな内容を提示

今回は当事者の方の希望により
①将来的には学校に行ってみたいが、今は難しいと思っている。そういった本人の葛藤を一緒になって解決していく。ある程度解決すれば、どうしていきたいのかを考えていく。
②勉強の不安の解消。
③誰にも気を使わず外出できるようになりたい。
というような意向が示された。

担当カウンセラーより
④対人恐怖に対して認知行動療法による改善
⑤カウンセリングを行っていく中で、当事者の方に不足していると考えられる社会性を身につけるためにSST(ソーシャルスキルトレーニング)を行う。
⑥まず女性と話す練習を行っていき、将来的には男性とも話せるようにプログラムを考えていく。
⑦興味・関心の増加。集中力の向上。
という見解が示された。

親御さんの同意の下、上記7点の援助をスタート。

③実際の援助(今回は当事者の方とカウンセラーが週2回ペースでお会いしておりました。)

当事者の方が外出できるようになるまで→カウンセラーが訪問
当事者の方が外出できるようになった後→当事務所で実施

当事者の方が実際行ったこと
○ 過去に会った出来事の認知の再構成
○ カウンセラー同行の下、様々なところへの外出
○ 認知行動療法による対人恐怖の改善
○ 社会性の獲得のための指導
○ 勉強の指導
○ 事務所スタッフも協力し、初対面の人と喋る訓練
※当事務所では心理学習得を目的とした研修生を採用しており、場合によっては当事者の方のコミュニケーション能力や社会性の獲得の為、交流を持つようなことも行っております。
※こういった社会性の獲得のためのトレーニングをSST(ソーシャルスキルトレーニング)と言います。

結果
○ 全般的なコミュニケーション能力や社会性の向上
○ 興味・関心の広がり
○ 対人恐怖の緩和
○ 過去の出来事の気持ち的な整理
○ 初対面の人とも少しずつしゃべれるようになった
以上のような結果が見られました。
期間としては6カ月弱でプログラムを終了することができました。

その後、当事者の方に関しては週1回のカウンセリングを行っておりご家族の方には月1、2回程度お電話にて当事者の方の様子やご家庭の様子をヒアリングさせて頂いております。

現在では当事者の方が研修生の勉強会に来られております。また高校への入学を非常に前向きに検討されておられます。

☆このケースの場合、当事者の方自体の前向きな取り組みやご家族の方の理解や支援により、大変効果がありました。カウンセラーが当事者の方との信頼関係を構築するまで時間はかかりましたが、構築できてからは大きく前進できたと思います。

当事者の方にお話を聞くと
○ カウンセラーさんのことを最初は信用できない部分があったが、信頼関係が出来てからはいいお姉さんという感じがして、楽しく過ごせた。むしろ、会える日が待ち遠しかった。それにいろいろガールズトークを出来て楽しかった。
○ まだ不安が無いわけではないが、少しずつ外に出かけることができるようになってきた。
○ しっかりやるとき、楽しくやる時、いろいろ考える時で空気の切り替えの仕方がすごい!
○(プログラムを)受けてよかったと思う。

担当の女性カウンセラーのコメント
○ 関係構築までは時間はかかったが、それ以降は当事者の方の方も大変協力的であった。
○ 初めて事務所まで彼女一人で来たときはとてもうれしかった。内心、色々な感情で涙が出そうになった。
○ ご家族の方のあたたかい支援があった。いつもご自宅に伺うと、お母さんが笑顔で出迎えてくださったのが印象的だった。よくご飯を作ってくださり、これがすごくおいしくて当事者である娘さんと一緒に作り方を聞かせていただくこともあった。
○ 当事者の方やご家族の方が終始、私を信じて下さった。
○ 今後も対人不安の再発がでないように援助していきたい。
等が挙げられました。